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光合成反応中心蛋白質における初期電子移動機構の解明

光合成反応中心 (photosynthetic reaction center, RC) 蛋白質においては太陽光エネルギーを使って電子移動が起こります。紅色光合成細菌の持つバクテリアRC (bacterial RC, bRC) (図1) には、スペシャルペア (special pair, SP) と呼ばれるバクテリオクロロフィル (bacteriochlorophyll, BChl) の二量体をはじめとした、複数の酸化還元活性分子(コファクター)が存在しています (図2)。光エネルギーにより励起されたSPから、電子が複数のコファクターを経由し、QBと呼ばれるキノンへと移動することで電荷分離状態が形成されます。各コファクターは、擬2回回転 (C2‘) 対称軸に関して対称に配置されており、電子移動経路として、Aブランチ、Bブランチの2つが存在します(図2)。AとBの両ブランチは対称的に配置されているにも関わらず、電子移動はAブランチのみで起こることがしられています(図2)。しかし、その理由は未だ明らかになっていません。

私たちは、蛋白質の分子構造に基づき、各コファクターの分子軌道のエネルギー準位および酸化還元電位Emを求めることによって、Aブランチのみで電子移動が起こる原因を調べています。

なお、蛋白質中の酸化還元活性分子の酸化還元電位はPoisson-Boltzmann方程式に基づいて理論化学計算で求めることができます。

図1 紅色光合成細菌の持つバクテリアRC (bRC)
図2 bRCにおけるコファクターの配置とAブランチのみの電子移動。SP: BChl二量体、 BA, BB: BChl、HA, HB: バクテリオフェオフィチン、QA, QB: ユビキノン